「性教育」と聞くと、日本ではまだ少し照れやためらいを覚える方も多いのではないでしょうか。学校教育では思春期に入った子どもたちに部分的な知識が伝えられる程度で、避妊や感染症の予防にとどまることもしばしばです。大切なはずの「自分の身体を知ること」や「セルフケアの方法」については十分に触れられず、性がどこか後ろめたいものとして扱われてきました。
一方で、海外では性教育は「健康教育」、そして「ウェルネス」の一環として捉えられています。オランダでは幼少期から「自分の身体を大切にする」「嫌なことにはNOと言える」という自己決定の力を育みます。北欧諸国では多様な性のあり方やジェンダー平等を自然に学び、アメリカやカナダでは避妊や性感染症に加え、人間関係や同意(consent)の重要性までも教えられています。性は生きる上で欠かせない要素であり、心身の健康や人生の質に深く関わることが、当たり前の前提として共有されているのです。
こうした違いは文化背景から生まれています。日本では長く性がタブー視され、話題にすることさえ避けられてきました。その結果、インターネットや噂から得た不確かな情報に頼る若者も少なくありません。対して、海外では「語らないことこそがリスクにつながる」という認識が浸透し、オープンに語ることが子どもを守るという価値観が根づいています。

ただ、日本でも前向きな変化が起き始めています。ジェンダーや多様性を意識した教育が少しずつ広がり、NPOや市民団体による活動、SNSを通じた発信、そしてフェムテックの普及によって、自分の身体やセクシャルヘルスに関する情報を得やすくなりました。月経や膣ケア、更年期サポートといったフェムケア領域の発展も、性教育を「女性の健康」に直結するものとして再定義し始めています。
性教育は、単なる「知識の習得」ではありません。それは自分の身体を知り、心をケアし、他者との関係をより健やかに築くための「ライフスキル」でもあります。つまり、ウェルネスの基盤に欠かせない学びなのです。子どもたちが自然に自分の身体を理解し、尊重し合える関係を築ける社会を目指すことこそ、これからの日本に必要な歩みではないでしょうか。
